さまざまな歴史の変遷の末に、現在の住宅がもたらされたことは言うまでもありませんが、その流れを見れば、明治以前からヨーロッパ諸国では石造の住宅が主流だったのに比して日本の住まいは簡単な小屋で、雨露を凌げればよいという考えが一般的だったことがわかります。つまり鴨長明の「方丈記」に書かれているように、日本人にとって「住む」ということは、つねに「仮」のものであり、そこで寝食の最低が確保されていれば良かったのです。建物の材料は木と紙と土で、しかもつねに火災を想定して建てられ、「家が焼けたらまた建て直す」といった思想は、日本文化における「住」の捉え方を示し、日本人の住居観の根でもあったと言えます。これは、住まいに関して日常交わされる会話の中にも表れており、例えば、今住んでいる住まいが、「私の終の住処」だと明言する人は、極めて限られます。現在の住まいに「永住」するだろうとなんとなく予感してはいても、その気は薄く、いつの日か自分にあった「永住」の地を見つけ移り住む、と思っている人が殆どなのです。物が溢れる劣悪な住まいを、「仮住まい」という意識や言葉によって合理化している面もあります。特に地方出身者で、現在東京に住まいを購入し住んでいても、定年後いつか田舎に帰りたいと思っている人や、山や海の見える所に住みたいと心に思い描いている人は、結構多い。また、こんな話もよく聞きます。いつか念願の家を持とうと思い、それまでは現在住んでいる住まいに手をかけることは全く無意味だと判断し、ただ寝食が可能な最低限の空間で暮している人。
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